「リンパ節腫脹」を主訴に外来を訪れた患者さん。
触ってみたら確かに腫れているけれど、これは反応性?それとも転移?
細胞診をする?するならどう刺す?——初期研修医や学生にとって、リンパ節の評価は意外と難しいテーマです。
この記事では、リンパ節の正常構造から転移を疑うポイント、そして細胞診(FNA)の実践的なコツまで、初期研修医・医学生向けに整理します。
1. リンパ節の正常構造
大きさ
- 正常リンパ節:通常短径10mm以下(鼠径部は2cm程度まで正常)
- 部位による違い:頸部・腋窩は1cm以下、鼠径は1.5〜2cmまで許容
- ただし大きさだけで良悪性は判断できない
内部構造(皮質→髄質)
| 部位 | 役割 |
|---|---|
| 皮質(cortex) | Bリンパ球が集まる胚中心(germinal center)を含む |
| 傍皮質(paracortex) | Tリンパ球領域 |
| 髄質(medulla) | 形質細胞・マクロファージが豊富、リンパ排出経路 |
| 被膜(capsule) | 線維性結合組織で全体を包む |
| 門部(hilum) | 血管・遠心性リンパ管の出入り口、脂肪組織を含む |
超音波で見える正常構造
| 所見 | 意味 |
|---|---|
| 扁平な楕円形 | 長径/短径比(L/S比)≧2 |
| 高エコーの中心(hilum) | 脂肪組織を反映、正常の証 |
| 薄い低エコーの皮質(2〜3mm) | 均一な厚み |
| 血流は門部から放射状 | 中心性血流パターン |
→ **「楕円・hilum見える・皮質薄い・血流が門部中心」**が正常リンパ節の4大所見。
2. 転移を疑うポイント
正常との違いを意識すると、転移所見が見えてきます。
視診・触診の所見
| 所見 | 良性傾向 | 悪性傾向 |
|---|---|---|
| 硬さ | 弾性軟 | 硬い・石様硬 |
| 表面 | 平滑 | 凹凸あり |
| 可動性 | 良好 | 周囲組織と癒着・固定 |
| 圧痛 | あり(炎症性) | なし(転移は通常無痛性) |
| 増大速度 | 数日〜数週で変動 | 進行性に増大 |
超音波での悪性所見
| 所見 | 意味 |
|---|---|
| L/S比 < 2(円形化) | 内部構造の破壊を示唆 |
| hilumの消失 | 髄質脂肪が腫瘍に置換 |
| 皮質の偏在性肥厚(focal cortical thickening) | 早期の転移で見られる |
| 皮質の全周性肥厚 | 3mm以上で要注意 |
| 内部エコーの不均一・微小石灰化 | 悪性所見 |
| 辺縁不整・分葉状 | 被膜外浸潤の可能性 |
| 辺縁血流・混合性血流 | 中心性が消失し辺縁から血流 |
| 短径1cm以上 | 部位によるが目安の一つ |
CT/MRIでの悪性所見
| 所見 | 意味 |
|---|---|
| 短径1cm以上(部位による) | 目安、絶対ではない |
| 円形化(短径/長径比増加) | 形態変化 |
| 中心壊死(low density) | 腫瘍内壊死 |
| 環状濃染 | 被膜浸潤の可能性 |
| 節外進展(extracapsular extension) | 予後不良因子 |
| クラスター形成 | 複数個の腫大 |
病態別の特徴
| 病態 | 特徴 |
|---|---|
| 反応性(炎症性) | hilum保たれる、皮質均一肥厚、痛みあり |
| 転移性 | hilum消失、皮質偏在性肥厚、無痛性 |
| 悪性リンパ腫 | 多発・大型、均一な低エコー、hilum消失 |
| 結核性 | 中心壊死、周囲炎症、肉芽腫形成 |
3. 細胞診(FNA)検査時のポイント
「腫大リンパ節を見つけた→FNA」となる場面は多いですが、手技と適応を押さえておくと診断率が大きく変わります。
適応の判断
- 画像上悪性を疑うリンパ節
- 原発不明癌の精査
- 既知の癌患者で転移評価
- 反復する反応性腫脹で別疾患を疑う
要注意
- 抗凝固薬服用中(休薬の判断要)
- 表面に血管・神経が走る部位(深頸部・腋窩)
- 患者協力が得られない場合
手技のコツ
体位・準備
- リンパ節が最もよく触れる体位にする
- 頸部なら頸部伸展・回旋
- 腋窩なら患側上肢を頭上に上げると良い場合もある
- 超音波ガイド下が原則(特に深部・小リンパ節)
針の選択
- 22G〜25Gの細針(注射用と同等)
- 21Gは出血リスクが上がる
- 5〜10mlシリンジ+ホルダー or 単独穿刺
穿刺の実際
| ステップ | コツ |
|---|---|
| 1. 消毒 | 通常の皮膚消毒で十分 |
| 2. 局所麻酔 | 皮膚のみ(深部麻酔は不要、所要時間で痛みは少ない) |
| 3. 固定 | リンパ節をしっかり指で固定、動かないように |
| 4. 穿刺 | 皮膚に垂直に刺入、リンパ節中心へ |
| 5. 採取 | 陰圧をかけながら、針先を前後に数回動かす(fanning) |
| 6. 抜針時 | 陰圧を解除してから抜く(重要:解除しないと血液混入) |
| 7. 圧迫 | 3〜5分しっかり圧迫止血 |
採取量を増やすコツ
- 複数方向にfanning(扇状に針先を動かす)
- 2〜3回穿刺を考慮(採取部位を変える)
- 採取はリンパ節に当たってから1〜3秒以内(長すぎると血液混入)
標本作製(検査技師のサポートがあると確実)
- 塗抹:採取後すぐにスライドガラスへ
- 1スライドに2〜3滴
- 別のスライドで軽く押し広げる(強くこすらない)
- 固定:用途による
- パパニコロウ:95%エタノール湿固定
- ギムザ:自然乾燥
- 病理科と事前に固定方法を確認
よくある失敗
| 失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 血液ばかり採れる | 陰圧かけすぎ、長時間穿刺 | 短時間で抜く、陰圧弱め |
| 細胞が少ない | 針先がリンパ節外、穿刺浅い | 超音波で位置確認 |
| 判定不能(class I) | 標本作製不良 | 塗抹を素早く・薄く |
| 採取後の血腫 | 圧迫不足 | 5分以上の圧迫 |
4. 細胞診結果の解釈
Papanicolaou分類
| Class | 意味 |
|---|---|
| Class I | 異型細胞なし(標本不良の場合も含む) |
| Class II | 異型あるが良性 |
| Class III | 良悪性の判定困難(IIIa:良性傾向、IIIb:悪性傾向) |
| Class IV | 悪性疑い |
| Class V | 悪性 |
重要:偽陰性・偽陽性
偽陰性(実際は悪性なのにClass I/II)
- 針が腫瘍部位を外した
- リンパ節の一部にのみ転移巣(部分転移)
- 標本量が不十分
→ 臨床的に強く悪性を疑うならClass II/IIIでも生検を
偽陽性(良性なのにClass IV/V)
- 反応性異型細胞の過大評価
- 結核などの肉芽腫を悪性と誤判定
→ 病理結果と臨床所見が乖離する場合は再評価
5. 細胞診で診断が困難な場合
細胞診はあくまでスクリーニング。確定診断には限界があります。
次のステップ
| 状況 | 推奨される追加検査 |
|---|---|
| 細胞診Class III、臨床的に悪性疑い | コア生検(針生検) |
| 悪性リンパ腫疑い | リンパ節摘出生検(フローサイトメトリー必要) |
| 原発不明癌 | 免疫染色(細胞ブロックも作る) |
| 結核疑い | 抗酸菌染色・PCR・培養 |
悪性リンパ腫を疑う場合
- 細胞診ではサブタイプ確定困難
- 摘出生検が原則(B/T細胞の表面マーカー解析が必要)
- 細胞診結果に頼りすぎず、摘出に進む判断を早めに
6. 部位別の注意点
頸部リンパ節
- 解剖学的に重要な構造(頸動脈・神経)に注意
- 後頸部はガイド下推奨
- 上深頸部の腫脹は鼻咽頭癌の可能性も
腋窩リンパ節
- 乳がん患者では転移評価に重要
- センチネルリンパ節を見つけることが大切
- ガイド下が無難だが、フリーハンドで出来ないと検査担当医にはなれないと思う
鎖骨上リンパ節(Virchow node)
- 左鎖骨上腫大は胃癌の可能性(古典的所見)
- 何らかの悪性が疑われる→強い悪性疑い所見
鼠径リンパ節
- 正常でも2cm近くまで触れる(誤判定注意)
- 下肢・外陰・肛門領域の感染で反応性腫大しやすい
まとめ
- 正常リンパ節:扁平、hilum見える、皮質薄い、門部血流
- 転移を疑う4ポイント:①L/S比<2 ②hilum消失 ③皮質偏在性肥厚 ④辺縁血流
- 細胞診のコツ:超音波ガイド・しっかり固定・fanning・陰圧解除後抜針
- 偽陰性に注意:臨床的に悪性疑いなら細胞診陰性でも生検へ
- 悪性リンパ腫疑いは摘出生検が原則
- 部位ごとの正常サイズと注意点を押さえる
リンパ節評価は「触ってみる→画像で評価→必要なら細胞診→困ったら生検」の流れが基本です。
日常診療で頻繁に遭遇する場面なので、各ステップの判断軸を持っておくと自信を持って対応できます。
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- 乳腺の針生検——痛み・所要時間・結果が出るまで(患者向け、手技の理解に)
参考情報源
- 日本超音波医学会「超音波診断ガイド」:https://www.jsum.or.jp/
- 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2022年版」(腋窩リンパ節評価):https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/
- 日本病理学会「病理診断ガイドライン」:http://pathology.or.jp/
- UpToDate “Lymphadenopathy in adults” - 一次資料として推奨
- OpenEvidence(医師向け臨床AI)も活用可:https://www.openevidence.com/(詳細はこちら)
筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。