この記事は DESIGN-R®2020 スコア計算機 の別表です。 D(深さ)とI(炎症/感染)の判定に迷いやすいポイントを、学生・研修医への指導にも使える形でまとめました。
D — Depth(深さ)の判定詳細
Depthは重症度のカテゴリ分けに使い、合計点には含めません。軽症は小文字(d)、重症は大文字(D)で表記します。
図:どの層まで損傷が達しているかでd0〜D5を判定する。DDTIは表面が軽症に見えても深部に損傷が隠れている。DUは壊死組織で創底が見えず判定できない状態(当サイト作成)。
| コード | 定義 | 判定のポイント |
|---|---|---|
| d0 | 皮膚損傷・発赤なし | 治癒後の状態もd0。瘢痕はあってよい |
| d1 | 持続する発赤 | 指押し法(またはガラス板圧診法)で消退しない発赤。押して白く消退する発赤は反応性充血であり褥瘡ではない(d0) |
| d2 | 真皮までの損傷 | 水疱・びらん・浅い潰瘍。創縁と創底に段差がない浅い創。皮下脂肪は見えない |
| D3 | 皮下組織までの損傷 | 創縁と創底に段差ができる。黄色の皮下脂肪組織が見える。筋膜は越えない |
| D4 | 皮下組織を越える損傷 | 筋肉・腱・筋膜・骨の露出。骨に触れる場合は骨髄炎の検索も検討 |
| D5 | 関節腔・体腔に至る損傷 | 関節腔・体腔と交通する最重症。仙骨部では直腸との交通に注意 |
| DDTI | 深部損傷褥瘡(DTI)疑い (2020追加) |
下記参照 |
| DU | 深さ判定が不能 | 壊死組織で覆われ創底が確認できない状態。デブリードマン後に再評価してD3〜D5へ再分類する |
DDTI(深部損傷褥瘡疑い)を見抜く
表層は軽症に見えても、骨に近い深部で組織損傷が先に起きている病態です。数日〜2週間ほどで壊死が表面化し、一気にD3〜D5相当へ「化ける」ことがあります。
疑うサイン(視診・触診):
- 二重発赤(発赤の中にさらに濃い発赤・紫斑・血疱)
- 周囲と比べた硬結・泥のような軟らかさ(boggy感)
- 疼痛(体位変換時・触診時)
- 温度差(周囲より熱い、または冷たい)
補助診断としてエコー(皮下の低エコー域・層構造の乱れ)やサーモグラフィが有用です。
指導のポイント: 「見た目が軽い=軽症」ではないことを教える最良の題材です。踵部・仙骨部の紫斑を見たら、まずDDTIを疑わせてください。
I — Inflammation/Infection(炎症/感染)の判定詳細
| コード | 点数 | 定義 | 判定のポイント |
|---|---|---|---|
| i0 | 0点 | 局所の炎症徴候なし | — |
| i1 | 1点 | 局所の炎症徴候あり | **炎症の4徴(創周囲の発赤・腫脹・熱感・疼痛)**のいずれかがある。創周囲の変化であり、創面の状態ではない |
| I3C | 3点 | 臨界的定着疑い (2020追加) |
下記参照 |
| I3 | 3点 | 局所の明らかな感染徴候 | 炎症徴候に加え、膿・悪臭がある。蜂窩織炎の合併に注意 |
| I9 | 9点 | 全身的影響あり | 発熱など全身反応を伴う感染。敗血症・骨髄炎を念頭に、培養・血液検査・画像へ進む |
I3C(臨界的定着疑い)を見抜く
「明らかな感染(I3)ではないが、細菌負荷のせいで治癒が停滞している」状態です。バイオフィルムの関与が想定されており、2020年改訂の目玉の一つです。
疑うサイン(創面を見る):
- 創面のぬめり(バイオフィルムを示唆)
- 滲出液が多い(ドレッシング交換の頻度が増える)
- 肉芽があれば浮腫性で脆弱(ぶよぶよして接触で出血しやすい)
- 数週間、創のサイズ・深さが改善しない
i1・I3との見分け方:
創周囲の炎症4徴だけ → i1
創面のぬめり・過多な滲出液・
脆弱な浮腫性肉芽+治癒停滞 → I3C
膿・悪臭までそろう → I3
発熱など全身反応 → I9
指導のポイント: i1(創の「周囲」を見る)とI3C(創の「表面」を見る)は観察部位が違う、と教えると混同が減ります。「先週と写真を比べて治っていない褥瘡」を見たらI3Cを想起させてください。
まとめ:カルテ記載の例
仙骨部褥瘡:DU-E6・s3・I3C・G5・N3・P0(合計17点)
→ 壊死組織あり深さ判定不能。ぬめり・滲出液過多あり
臨界的定着を疑い、メンテナンスデブリードマン+
抗菌性外用剤へ変更。1週間後に再評価。
スコア計算は DESIGN-R®2020 スコア計算機 をご利用ください。
出典・参考
- 日本褥瘡学会(JSPU)公式サイト
- 日本褥瘡学会「DESIGN-R®2020 改訂のポイントと活用」
- 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版」(2022)
※DESIGN-R®は日本褥瘡学会の登録商標です。本記事は教育目的の解説であり、正式な運用は学会公式の評価マニュアルをご参照ください。臨床判断の代替ではありません。
筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。