子どもに「お金の力」を身につけてほしい——そう思う親は多いはずです。でも、お金の話は抽象的で、口で説明してもなかなか伝わりません。

そこで考えたいのが、「資産形成」と「金融教育」を分けて設計するという発想です。2027年から始まる新制度「こどもNISA」と、ある工夫を組み合わせると、これがうまく整理できます。

この記事では、わが家でも検討している子どもの金融教育の組み立て方を、ひとつの考え方として紹介します。

⚠️ これは投資を勧める記事ではありません。投資にはリスクがあり、元本は保証されません。金額や方針は、各家庭の状況に合わせて無理のない範囲で考えてください。


まず、「こどもNISA」とは(2027年スタート予定)

2023年末で終了した「ジュニアNISA」に代わる新しい制度として、**「こどもNISA」**の創設が決まりました。2025年12月の令和8年度税制改正大綱に盛り込まれ、2027年1月開始予定です。

現時点で示されている主な内容は——

項目 内容(案)
対象 0〜17歳の未成年
年間投資枠 最大60万円(月5万円まで)
非課税保有限度額 600万円
非課税期間 無期限
引き出し 原則12歳まで制限、以降は子の同意で可
18歳になったら 成人NISAのつみたて枠へ自動で引き継ぎ

制度の細部は2026年中に確定します。最新情報は金融庁のNISA特設サイトなどでご確認ください。

非課税で長期間運用できるので、子どものための資産形成には心強い制度です。


「資産形成」と「金融教育」は、目的が違う

ここで大事なのが、この2つは目的が違うということです。

  • 資産形成=子どもの将来のために、コツコツ・ほったらかしで増やす
  • 金融教育=お金の流れを「体感」して、生きた知識として学ぶ

この2つを1つの口座でまとめてやろうとすると、どっちつかずになりがちです。だから、わが家では分けて考えています。

目的 使うもの 中身
資産形成 こどもNISA 全世界株インデックス(オルカン等)
金融教育 課税口座 分配金が出るETF(VT等)

資産形成は「こどもNISA × オルカン」

将来のための資産形成は、こどもNISAで低コストの全世界株インデックス(いわゆる「オルカン」=オール・カントリー)を、淡々と積み立てるのが王道です。

お祝い金や児童手当の一部を回し、手をかけずに長期で育てる。非課税のメリットを最大限に使う、シンプルで強い方法です。

ただし——オルカンのような投資信託の多くは、分配金を出さず、内部で自動的に再投資します。効率は良いのですが、「お金が入ってくる」という実感が乏しい。つまり、教材としては地味なのです。


金融教育は「課税口座 × VT」=生きた教材

そこで、学びの教材としては、あえて分配金が出るものを選びます。代表例がVT(全世界の株に分散する米国上場ETF)です。

VTは年に数回、分配金が支払われます。これを子どもと一緒に追いかけると、お金の仕組みがまるごと体験できます。

  • 分配金が入ってくる(=「持っているだけでお金が生まれる」を実感)
  • そこから税金が引かれる(=「利益には税金がかかる」を学ぶ)
  • 米ドルなので、為替で受取額が変わる(=「円高・円安」を体で理解)
  • 受け取った分配金を自分で再投資してみる(=複利の入り口)

オルカンの「自動で再投資」だと見えなくなるこの一連の流れが、VTなら目に見える形で起きる。本やお金の授業より、よほど記憶に残るはずです。

こうした「分配金を教材にする」考え方は、お金の学びの場でもよく語られています。増やす効率ではなく、学びの効果を優先して、あえて分配金が出るものを選ぶ——ここがポイントです。


いつから始める?——「金融教育パート」は子どもの年齢で分けて考える

ここが、いちばん大事なところです。「資産形成」と「金融教育」は、始められる年齢が違います。

  • 資産形成(こどもNISA × オルカン)は、0歳からでもOK。親が積み立てるだけなので、子どもが小さくても問題ありません。むしろ早く始めるほど有利です。
  • 金融教育(課税口座 × VT)は、子どもが理解・判断できる年齢になってからが向いています。分配金や為替を「体感する教材」は、本人がある程度わかる年齢でないと、ただ親が運用しているだけになってしまいます。

⚠️ 未就学児・小学生のうちに「課税口座での金融教育」を始める場合の注意

お子さんがまだ小さい段階(未就学児〜小学生)で、教育目的の課税口座を始めようと考える方は、次の点をはっきり意識してください

  • 本人が理解・判断・管理できないため、「生きた教材」としての効果はまだ得られません(親が運用を見せるだけになります)
  • 本人が管理できないぶん、後で述べる**「名義預金」とみなされるリスクが高まります**(実質は親の財産と判断されやすい)
  • 税金や手続きの手間だけが先に発生します

→ つまり、小さいお子さんのうちは「資産形成(こどもNISA)」だけを淡々と進め、「金融教育(課税口座VT)」は本人が分かる年齢になってから足す——という順番が、いちばん無理がありません。焦って早く課税口座を作る必要はありません。

わが家の場合:子どもは中学生・高校生なので、こどもNISA(資産形成)はこれから活用しつつ、課税口座での金融教育は、自分で判断できるようになるまで一緒に説明し、最終的には本人に決めてもらう方針です。お金のことは、最後に「自分で選ぶ」という経験そのものが、何よりの教育だと考えています。


税務はやさしくない——知っておきたい3つの落とし穴

「課税口座で金融教育」は、実は税金まわりがかなり複雑です。良い面だけでなく、正直にお伝えします。

① 二重課税(米国で約10%+日本で約20%)

VTのような外国ETFの分配金は、**まず米国で約10%**引かれ、**残りに日本で約20%**かかります。米国分を取り戻すには「外国税額控除」=確定申告が必要です。

②【盲点】確定申告すると「扶養」から外れることがある

未成年でも**特定口座(源泉徴収あり)**を作れば、税金は自動で天引きされ、申告しなければその利益は子どもの所得に数えられず、扶養のままでいられます。

ところが、①を取り戻そうと確定申告すると、その利益が子どもの「合計所得」に算入され、48万円を超えると扶養から外れて、親の税金がかえって増えることがあります。子どもは所得が少なく外国税額控除を使い切れないことも多いので、ムリに取り戻さないという判断もアリです。

③ 名義預金の問題

親のお金で子ども名義で買うと、「実質は親の財産(名義預金)」とみなされるリスクがあります。贈与として成立させるには、①年110万円以内 ②親子双方の合意 ③子ども自身が管理——が必要です。

現実的な落としどころ

方針 内容
口座 特定口座(源泉徴収あり)
確定申告 あえてしない(扶養を外さない。米国分の約10%は“授業料”と割り切る)
金額 年110万円以内&少額
本格的にやるなら 税務署か税理士に必ず確認

もちろん元本保証はありません。「教育のための授業料」と思える、無理のない金額にとどめましょう。


まとめ

  • 子どもの金融教育は、「資産形成」と「金融教育」を分けて設計すると整理しやすい
  • 資産形成=2027年開始のこどもNISA × オルカン(非課税・低コスト・ほったらかし)
  • 金融教育課税口座 × VTなど分配金が出るもの(お金の流れを体感する生きた教材)
  • オルカンは分配金が出ない=教材としては地味。だから学び用には、あえて分配金が出るもの
  • 金融教育パートは子どもの年齢を選ぶ。未就学児・小学生のうちは資産形成だけ進め、課税口座での教育は本人が判断できる年齢になってから
  • 税務は複雑(二重課税・扶養から外れる罠・名義預金)。特定口座(源泉あり)+あえて申告しない+少額が無難。本格運用は税務署・税理士に確認を

お金の知識は、机の上だけでは身につきにくいもの。自分のお金が、増えて・税金が引かれて・為替で揺れる——その体験を親子で共有し、最後は本人が決める。それが何よりの教育になると思っています。


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参考

※税務の取り扱いは各家庭の状況により異なります。具体的な判断は、必ず税務署または税理士にご確認ください。本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な解説です。


筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。

お金の勉強はリベラルアーツ大学(リベ大)を参考にしています。