お金の勉強を始める前、筆者は民間保険にかなりの数加入していました。終身医療保険、がん保険、貯蓄型保険——「何かあったときのため」という感情ベースで、気がつけば毎月の保険料がかなりの額になっていました。
リベラルアーツ大学(リベ大)でお金の考え方を学び、ひとつひとつ見直していった結果、保険に対する考え方が根本から変わりました。今回は、その過程と現在の考え方を正直に書きます。
保険の役割は「破綻防止」
まず大前提として、保険とは何のためにあるのか。
保険の目的は、バッドイベントが起きたときに「人生が破綻すること」を防ぐことです。
儲けるためでも、「なんとなく安心」のためでもありません。
「あのとき保険に入っていてよかった」と感じる経験は誰でもあります。筆者にもあります(後述します)。しかしそれは「その保険が合理的だった」という証拠にはなりません。
人生でバッドイベントが起きること自体は避けられません。そのとき「保険なしでは生活が完全に破綻するか」——それが判断の基準線です。
保険と貯蓄は「混ぜるな危険」
お金の勉強をして最初に驚いたのが、終身医療保険や貯蓄型保険の仕組みでした。
「払った保険料が将来戻ってくる」「老後に役立つ」——そう案内されると良さそうに聞こえます。しかし実態は、保険と貯蓄を1つの商品に混ぜることで、どちらも中途半端になっている構造です。
保険は掛け捨てが基本です。高い手数料を払って運用を保険会社に任せる理由はありません。
保険は保険。貯蓄は貯蓄。それぞれ目的に応じた場所に置くのが合理的です。
終身医療保険がダメな理由
終身医療保険は「死ぬまで医療保険が続く」商品です。
人は年を取れば必ず病気になります。つまり、加入者のほぼ全員に給付が発生する保険です。それでも保険会社が利益を出せるのは、加入者全員から高い手数料を取っているからです。
「入っているだけで損し続けている」——その構造に気づくことが第一歩でした。
わが家の保険の現状(正直に)
現在のわが家の状況を正直に書きます。
| 保険の種類 | 現状 |
|---|---|
| 終身医療保険(筆者) | 解約済み |
| 貯蓄型保険(配偶者) | 未解約・解約検討中 |
| 民間がん保険(夫婦) | 継続中 |
| 自動車保険(対人・対物) | 継続中(必須) |
| 自動車保険(車両保険) | 継続中(後述) |
| 死亡保障 | 最小限に調整済み |
配偶者の貯蓄型保険も、民間がん保険も、まだ解約できていません。
がん保険については、解約を検討したことがあります。しかし「解約しても大丈夫」と配偶者が納得できるだけの貯蓄が、当時はまだ十分ではありませんでした。配偶者の目線から見て家計がまだ不安定に映ることも、解約に踏み切れていない大きな理由のひとつです。
今後、夫婦で家計管理を続けながら「掛け捨てのがん保険がなくても大丈夫」と二人で思えるタイミングが来れば、解約できると思っています。なお、2026年の高額療養費制度の改定で医師世帯など高所得帯の自己負担上限が引き上げられる見込みがあり、医療費の試算が以前より増えています。そこも貯蓄でカバーできる水準に近づけば、解約の判断がしやすくなります。
ライフプランシートを見直すたびに「具体的な数字」と向き合うことで、漠然とした不安から少しずつ解放されていく——そのプロセスを続けていくつもりです。「すべてきれいに見直した」とは書けません。これがわが家のリアルです。
民間がん保険が不要だと考える理由(それでも継続中)
頭では不要だとわかっていても、実際に解約できていないのが正直なところです。その上で、論理的に「不要」と考える根拠を整理しておきます。
① 高額療養費制度の存在
日本の公的保険には高額療養費制度があり、1ヶ月の医療費の自己負担に上限がかかります。一般的な収入帯では月8〜9万円が上限の目安です。がん治療の総額が何百万円になっても、毎月の実際の自己負担はこの範囲に収まります。
詳しくは → 医師が「民間がん保険は不要」と考える理由——数字で解説
② 3大疾病団信(住宅ローンに付帯)
住宅ローンに3大疾病団信を付けています。がん・急性心筋梗塞・脳卒中を発症し所定の条件を満たせば、残りのローン残高が消えます。住宅ローンの中にすでに「がん保険」が内蔵されているようなもので、別途民間がん保険に入る理由がありません。
車両保険:「不要」と言いながら、恩恵を受けた話
ここが今回一番正直に書きたい部分です。
車の保険について、リベ大の考え方はこうです。
- 対人・対物賠償:何千万〜億単位の賠償リスクがある → 必須
- 車両保険:自分の車の修繕費。払えなくても人生は破綻しない → 原則不要
「車両保険がなければ払えない」なら、そもそもその車に乗るべきでない——という考え方です。
筆者もこの考え方に同意しています。しかし今も車両保険に加入しています。
理由は単純で、高額な車に乗っているからです(近い将来、見直し予定です)。
そして先日、実際に車両保険の恩恵を受けることになりました。キャンプ中に車が故障し、レッカー代とレンタカー代が発生しました。これが保険で賄われました。「入っていてよかった」と感じました。
それでも「車両保険は不要」という立場は変わりません。
なぜなら——この経験は「バッドイベントが起きたが、破綻はしなかった」です。仮に保険がなかったとしても、そのコストは払える範囲でした。保険から支払われた金額と、これまで払い続けてきた保険料の累計を比べれば、おそらく保険料の方が多い。
「この経験があったから保険は必要だ」ではなく、「この経験でも、やはり破綻防止という基準で考えると不要だった」というのが正確な結論です。
事故や故障は損です。保険に入っていても入っていなくても、バッドイベントに遭った以上、何らかの意味で損をするのが普通です。保険はその損を「耐えられないレベル」から「耐えられるレベル」に引き下げるためのものです。
「安心」は高くつく
この言葉が、保険を考えるときの核心だと思っています。
「月1,000円なら安い」「何かあったときのために」——その安心のコストを一度計算してみてください。
| 保険料 | 30年間の支払総額 | 同額を年利5%で運用した場合 |
|---|---|---|
| 月1,000円 | 36万円 | 約83万円 |
| 月3,000円 | 108万円 | 約250万円 |
| 月5,000円 | 180万円 | 約417万円 |
「安心を買っている」という感覚はわかります。しかし安心には値段がついています。その値段を払う価値があるかどうかを、数字で判断することが大切です。
必要な保険と不要な保険の整理
結論をまとめると、こういう整理になります。
| 保険の種類 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 自動車(対人・対物賠償) | 必須 | 億単位の賠償リスク=破綻しうる |
| 個人賠償責任保険 | 必須 | 自転車事故等で高額賠償リスクあり |
| 死亡保障(遺族に必要な期間のみ) | 必要最小限 | 遺族が生活できなくなるリスクをカバー |
| 民間がん保険・医療保険 | 不要(多くの場合) | 高額療養費制度+貯蓄でカバー可能 |
| 終身医療保険 | 不要 | 手数料過大・貯蓄と混在 |
| 貯蓄型保険 | 不要 | 保険と貯蓄は分けて考える |
| 自動車(車両保険) | 原則不要 | 払えないわけではない → 破綻しない |
「不要」と書いた保険にも例外はあります。収入補償が必要な自営業者の方、生活防衛資金がほぼない方、先進医療を希望する方——状況によって判断は変わります。
ただし「なんとなく怖い」「家族が心配している」という理由だけで入るなら、一度立ち止まって考えてほしいと思います。
自分に問いかけてほしい一つの質問
保険の必要性を考えるとき、こう問いかけてみてください。
「公的保険と貯蓄では、具体的にどんなときにいくら足りないと思いますか?」
この問いに具体的な数字で答えられなければ、「なんとなく不安だから入っている」状態です。不安は感情です。感情でお金の判断をすると、長い目で見て損をします。
まとめ
- 保険の目的は**「バッドイベントで人生が破綻すること」を防ぐこと**
- 保険は保険、貯蓄は貯蓄——混ぜると両方が中途半端になる
- 「安心」は高くつく——その費用を払う価値があるか数字で考える
- 車両保険の恩恵を受けた経験があっても、「破綻防止」の基準で考えれば原則不要という立場は変わらない
- わが家も完璧には見直せていない(配偶者の貯蓄型保険は検討中)——それがリアルです
お金の勉強は一夜では終わりません。「知識を得る→自分の状況に当てはめる→判断する」という繰り返しの中で、少しずつ合理的な状態に近づいていくものだと感じています。
※本記事は筆者個人の見解であり、特定の保険・金融商品の加入や解約をすすめるものではありません。保険の要否は、ご自身の家計・資産・価値観に応じてご判断ください。
筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。お金の勉強はリベラルアーツ大学(リベ大)を参考にしています。