「健康保険証が、もう使えなくなるって本当?」——最近、患者さんやご家族から、そんな声を聞くことが増えました。

結論から言うと、これまで使ってきた紙やカードの健康保険証は、2026年7月末で役目を終えます。8月からは「マイナ保険証」か「資格確認書」のどちらかが必要になります。

ただ、見出しだけ読むと不安になりますが、多くの方は、特別な手続きをしなくても困らないように制度が整えられています。慌てる必要はありません。

この記事では、

  • 7月末で何が変わるのか
  • 8月から何が必要なのか
  • 多くの人は「待っているだけ」で大丈夫な理由
  • でも、高齢のご家族こそ早めに確認してほしいこと
  • 医師として伝えたい「マイナ救急」という命綱

を、できるだけやさしく整理します。慌てず、でも高齢のご家族は一度確認を、がこの記事のポイントです。


1. 7月末で、何が変わるの?

順を追うと、こういう流れです。

  • これまでの健康保険証は、2025年12月に新しく発行されなくなり、原則として使えなくなりました
  • ただし、急に切り替わると混乱するため、しばらくの間は**期限切れの保険証でも受診できる「暫定的な取り扱い」**が続いていました
  • その暫定的な取り扱いが、2026年7月末で終わります

つまり、2026年8月以降は、これまでの保険証では病院・薬局で「保険が効く形」での受診ができなくなるということです。

「自分はまだ古い保険証を財布に入れている」という方は、ここで一度立ち止まってください。8月からは、それ1枚では受診できなくなります。


2. じゃあ、8月から何が必要なの?

必要なのは、次のどちらか一つです。

  1. マイナ保険証(健康保険証として使う登録をしたマイナンバーカード)
  2. 資格確認書(マイナ保険証を使わない人に交付される、保険証の代わりになる書類)

両方を用意する必要はありません。 どちらか一方があれば、これまでどおり保険が効く形で受診できます。

  • マイナンバーカードを持っていて、保険証として使う登録をしている方 → マイナ保険証でOK
  • マイナンバーカードを持っていない、または保険証としての登録をしていない方 → 資格確認書を使う

3. 実は、多くの人は「待っているだけ」で大丈夫

ここが、いちばんお伝えしたい安心材料です。

マイナ保険証を持っていない方には、申し込みをしなくても、「資格確認書」が無料で自動的に届くしくみになっています。

ですから、

  • マイナンバーカードを持っていない
  • 手続きはよくわからない

という方でも、基本的には、手元に届く資格確認書を病院・薬局で見せれば、これまでどおり受診できます。「何もしないと無保険になってしまう」という心配は要りません。

過度に不安を煽る情報も見かけますが、制度としては「誰も取り残さない」形が用意されている——まずはここを押さえてください。


4. でも、高齢の親・ご家族こそ「今、一度チェック」を

安心とは言いましたが、油断していいわけではありません。特に、次のような方は、ご家族が一度確認してあげてください。

  • 高齢のひとり暮らしの親
  • 施設に入所している方、入退院を繰り返している方
  • 郵便物の管理が難しくなってきた方

確認してほしいのは、シンプルに3つです。

  1. マイナ保険証か資格確認書が、手元に届いているか(届いた郵便を「よくわからない書類」として放置していないか)
  2. 資格確認書に書かれた有効期限(資格確認書には期限があります)
  3. 次に受診する病院で、どちらを出せばよいかを本人と共有できているか

「親はちゃんとしているはず」と思っていても、届いた封筒の意味が分からず、しまい込んでしまっていることは珍しくありません。帰省や電話のついでに、「あの保険証の新しいやつ、届いてる?」と一声かけるだけで十分です。


5. 医師としてひとこと——いざというときの「マイナ救急」

今回の切り替えには、もう一つ、知っておいてほしいことがあります。**「マイナ救急」**という取り組みです。

——と言われても、「聞いたことがない」という方がほとんどだと思います。それもそのはずで、これは2025年10月から全国の消防・救急で本格的に始まったばかりの、新しいしくみだからです。まだ広くは知られていません。だからこそ、ここで知っておく価値があります。

かんたんに言うと、救急の現場で、決められた手続きのもとに、マイナ保険証を通じて、その人の過去のお薬や受診の情報を、救急隊や医師が確認できるというものです。

救急の現場、そして私が専門とする緩和ケアの現場で、いちばん怖いのは——

本人が話せず、付き添うご家族も「どんな病気で、どんな薬を飲んでいるか」を正確には知らない

という状況です。これは、決して珍しいことではありません。意識がはっきりしない、苦しくて話せない、お薬手帳が見当たらない——そんなとき、「その人がどんな治療を受けてきたか」が分かるかどうかで、初動の判断が変わることがあります。

「マイナ救急」は、いざというときに、そのギャップを埋めてくれる命綱になり得ます。普段からマイナ保険証を使い慣れておくことには、家計とは別の、**「もしものときの安心」**という価値があると、現場の人間としては感じています。

(※この記事では、特定の患者さんの事例ではなく、一般的な救急・緩和ケアの現場感としてお伝えしています。)


6. まとめ——今日できる小さな確認

最後に、チェックリストです。

  • 自分は マイナ保険証資格確認書 のどちらを使うか決まっている
  • 8月以降、財布の中の「古い保険証だけ」で受診しようとしていない
  • 高齢の親・家族に、新しい書類が届いているか確認した
  • 資格確認書の有効期限を見た
  • (余裕があれば)マイナ保険証を一度使ってみた

制度の切り替えは、どうしても「難しそう」「面倒そう」と感じてしまうものです。でも、やることは「どちらか一つを用意する」だけ。そして、多くの方は待っているだけで資格確認書が届きます。

ご自身のことよりも、少し離れて暮らす親御さんのことを、この機会に気にかけてもらえたら——医師として、そう願っています。

※制度の詳しい内容や、ご自身の保険の手続きについては、加入している健康保険の窓口(お勤め先の保険組合、お住まいの市区町村など)や、厚生労働省・自治体の公式情報で必ず最新のものをご確認ください。この記事は、2026年6月時点の公的な情報をもとに、一般的な解説としてまとめたものです。


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