「検診を受けたいけど、マンモグラフィと超音波のどちらが良いのか分からない」——そんな相談を診察室でよく受けます。
結論から言うと、どちらが「正解」というわけではありません。それぞれに得意なことと苦手なことがあり、年齢や乳房の状態によって向き不向きがあります。この記事では、乳腺外科医として20年診療してきた立場から、分かりやすく解説します。
1. マンモグラフィとは
マンモグラフィ検査のイメージ(イラスト:いらすとや)
マンモグラフィは、乳房をX線で撮影する検査です。乳房を2枚の板で挟んで圧迫しながら撮影するため、「痛い」というイメージを持つ方も多いですが、この圧迫によって薄く広げることで小さな病変を見つけやすくしています。
得意なこと:
- 石灰化(カルシウムの沈着)の発見
- 非浸潤性乳管がん(乳管を這って広がるタイプ)の検出
- 広い範囲を一度に確認できる
- 過去の撮影データと比較しやすい(同じ病変が同じ場所にある場合、経年変化を確認できる)
苦手なこと:
- 乳腺密度が高い(いわゆる「高濃度乳房」)の場合、がんが隠れて見えにくい
- 若い方や授乳中の方には不向き
対象となりやすい方: 40歳以上の方。日本の対策型検診(自治体の検診)では、40歳以上の女性に2年に1回のマンモグラフィが推奨されています。
参考情報源:国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 検診」(https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/screening.html)
2. 超音波検査(エコー)とは
乳腺エコー検査のイメージ(イラスト:いらすとや)
超音波検査は、プローブ(探触子)を乳房にあてて、音波の反射で内部の様子を画像化する検査です。痛みはなく、放射線も使いません。
得意なこと:
- 乳腺密度が高い方でも病変を見つけやすい
- しこり(腫瘤)の性状(良性か悪性かの判断の手がかり)を詳しく確認できる
- リアルタイムで動かしながら観察できる
苦手なこと:
- 石灰化の検出はマンモグラフィよりも不得意
- 検査者の技量に左右される部分がある
- 広範囲を短時間で確認するのはマンモグラフィより難しい
対象となりやすい方: 40歳未満の方、高濃度乳房の方、妊娠中・授乳中の方。
3. 「高濃度乳房」とは何か
近年、「高濃度乳房(デンスブレスト)」という言葉をよく耳にするようになりました。
乳房の中には乳腺組織と脂肪組織があり、マンモグラフィで乳腺組織が多い状態を「高濃度乳房」と呼びます。日本人女性の約40〜50%が該当すると言われています。
高濃度乳房では、マンモグラフィでがんが白い乳腺組織に隠れて見えにくくなります。このため、マンモグラフィの結果が「異常なし」でも油断できない場合があります。
自分が高濃度乳房かどうかは、マンモグラフィを受けた際に結果票や医師から教えてもらえます。高濃度乳房と言われた方は、超音波検査の追加を検討することをおすすめします。
参考情報源:日本乳癌検診学会「高濃度乳房について」(https://www.jabcs.jp/)
4. どちらを受ければいいか——年代別の目安
| 年代 | 推奨される検査 |
|---|---|
| 30代 | 超音波(乳腺密度が高いことが多い) |
| 40代 | マンモグラフィ+超音波の併用が理想 |
| 50代以降 | マンモグラフィ中心(脂肪化が進み見えやすくなる) |
ただし、これはあくまで目安です。高濃度乳房の方、家族に乳がんの方がいる方、以前に乳房に関する指摘を受けたことがある方は、年齢に関係なく主治医と相談して検査方法を決めることをおすすめします。
5. 自治体検診と人間ドックの違い
自治体検診(対策型検診):
- 40歳以上を対象に2年に1回
- マンモグラフィのみが基本
- 費用は数百〜2,000円程度(自治体による)
人間ドック・任意型検診:
- 年齢制限なし、毎年受けられる
- マンモグラフィ+超音波の併用も可能
- 費用は1万円前後
自治体検診は費用が安く受けやすい反面、超音波が含まれないことが多いです。特に30〜40代前半の方や、高濃度乳房の方は、人間ドックや乳腺外科への自費受診で超音波も合わせて受けることを検討してください。
まとめ
- マンモグラフィ:石灰化の発見に強い、40歳以上に向いている
- 超音波:しこりの発見に強い、若い方・高濃度乳房の方に向いている
- 理想は併用:どちらか一方より、組み合わせることで見落としを減らせる
- 高濃度乳房の方は、マンモグラフィだけでなく超音波も検討を
「どちらを受けるべきか分からない」という方は、まず地域の乳腺外科や婦人科に相談してみてください。検診の種類よりも、受けないよりは受けることが何より大切です。
筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。