「乳房の構成は『不均一高濃度』と判定されました」——検診結果の通知でこの言葉を見て、戸惑った経験はありませんか?
「高濃度乳房(デンスブレスト)」とは、マンモグラフィーで乳腺組織が多く写るタイプの乳房のことです。日本人女性に多く、特にアジア人女性で割合が高いと言われています。
この記事では、高濃度乳房とは何か、なぜ検診で問題になるのか、そしてどう対処すればよいのかを解説します。
1. 乳房の構成は4つに分類される
マンモグラフィーで撮影した画像から、乳房は乳腺組織と脂肪の割合によって4つに分類されます。
| 分類 | 名称 | 乳腺の割合 |
|---|---|---|
| 1 | 脂肪性 | ほぼ脂肪のみ |
| 2 | 乳腺散在 | 脂肪が多く、乳腺が少し散在 |
| 3 | 不均一高濃度 | 乳腺が多く、不均一に分布 |
| 4 | 極めて高濃度 | 乳腺がぎっしり |
このうち、**3「不均一高濃度」と4「極めて高濃度」を合わせて「高濃度乳房(デンスブレスト)」**と呼びます。
参考情報源:日本乳がん検診精度管理中央機構(精中委)「マンモグラフィガイドライン」(https://www.qabcs.or.jp/)
2. なぜ高濃度乳房が問題になるのか
高濃度乳房そのものは病気ではなく、体質のひとつです。しかし、検診の場面で2つの問題があります。
問題①:マンモグラフィーでがんが見えにくい
マンモグラフィーでは、乳腺は白く写ります。がんも白く写るため、乳腺が多い高濃度乳房では「白の中に白を探す」状態になり、がんが見えにくくなります。
イメージで言えば:
- 脂肪性の乳房:黒い背景の中に白いうさぎを見つけるように、小さながんも目立つ
- 高濃度乳房:白い雪原の中に白いうさぎを見つけるように、がんが見つけにくい
問題②:感度が下がる
J-START試験(東北大学・40代女性76,196人のRCT)でも、マンモグラフィー単独の感度は約77%にとどまり、超音波を併用することで91%まで向上することが示されています。
参考情報源:J-START試験(https://www.j-start.org/)
3. 日本人女性の高濃度乳房の割合
厚生労働科学特別研究事業の報告(平成30年)によると、40歳以上の日本人女性では約4割(37%)が高濃度乳房と報告されています。
平成26年度 福井県・愛知県の住民検診データ(40歳以上 22,493名)
| 乳房の構成 | 割合 |
|---|---|
| 極めて高濃度乳房 | 2% |
| 不均一高濃度乳房 | 35% |
| 乳腺散在乳房 | 58% |
| 脂肪性乳房 | 5% |
高濃度乳房(極めて高濃度+不均一高濃度)= 約37%
年齢による変化
加齢に伴い乳腺が減少するため、年齢が高いほど高濃度乳房の割合は低下します。特に閉経前の40代では高濃度乳房の割合が多いことが示されています。
ホルモン補充療法を受けている方や、授乳経験のない方は、高齢でも高濃度のまま維持される傾向があります。
参考情報源:平成29年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金 厚生労働科学特別研究事業「乳がん検診における乳房の構成(高濃度乳房を含む)の適切な情報提供に資する研究」班「高濃度乳房について」(平成30年3月31日)
4. 高濃度乳房と判定されたらどうするか
「自分は高濃度乳房だ」と知ったら、検診の選び方を工夫することが推奨されます。
① 超音波(エコー)の併用を検討
マンモグラフィー単独では見えにくい部分を、超音波で補うことができます。J-START試験では、マンモ+超音波で早期乳がんの発見率が約1.5倍になることが示されています。
任意検診(人間ドック)でマンモと超音波を組み合わせるのが現実的な選択肢です。
② 無痛乳房MRI(DWIBS)という選択肢
近年広がりつつある自費検診として、**無痛乳房MRI(DWIBS法)**があります。
- 乳房を圧迫しない(マンモグラフィーの痛みがない)
- 被ばくなし
- 造影剤不要
- 高濃度乳房でも検出能が高い
費用は自費で30,000〜50,000円程度と高めですが、高濃度乳房の方には特に有用な選択肢です。実施施設は限られているため、お住まいの地域で対応施設を確認してみてください。
参考情報源:無痛MRI乳がん検診(DWIBS)施設検索
③ 検診を欠かさず受ける
高濃度だからといって検診を諦める必要はありません。マンモグラフィーでも見つかるがんは多くあります。毎回確実に受けることが大切です。
④ 自分の乳房を意識する
ブレスト・アウェアネス(自分の乳房を日常的に意識する習慣)が特に重要です。
- 月1回程度、自分で触る
- しこり・痛み・分泌物などに気づいたらすぐ受診
5. 「乳房の構成」の通知について
近年、自治体検診の結果通知書に「乳房の構成」を記載する動きが広がっています。
ただし、自治体によって対応はまちまちです。
- 通知書に記載される自治体
- 希望者にのみ伝える自治体
- 記載しない自治体
ご自身の検診結果に「乳房の構成」が書かれていなかった場合は、受診した医療機関に問い合わせてみてください。
参考情報源:日本乳癌検診学会「乳房の構成(高濃度乳房)に関する情報提供のあり方」(https://www.jabcs.jp/pages/notification-of-breastdensity.html)
6. 「高濃度=危険」ではない
ここまで読んで「高濃度乳房って怖い」と感じた方もいるかもしれません。でも、高濃度乳房は病気ではありません。
- 高濃度乳房そのものは正常な体質
- がんになりやすいかどうかは別の話(諸説あり)
- 「マンモで見つかりにくい」という事実だけ知っておく
知ったうえで適切に超音波を組み合わせれば、検診の精度は十分に保てます。
まとめ
- 高濃度乳房は乳腺組織が多い体質で、日本人女性の40代では約4〜5割
- マンモグラフィーでがんが見えにくいという課題がある
- 超音波の併用で感度が大きく向上する(J-STARTより)
- 通知書に「乳房の構成」が書かれていれば確認する
- 高濃度=病気ではない。毎回検診を受け続けることが最重要
体質を知ることは、自分に合った検診を選ぶ第一歩です。心配な方は、医療機関で相談してみてください。
筆者:田舎の県庁所在地に住む医師。外科学会専門医・乳癌学会認定医。現在は乳がんの検診・診断と緩和ケアを専門に担当。医師になって20年。